基本計画策定後、2012年度より防災集団移転促進事業や区画整理事業をはじめとする各種事業の具体化が本格的に始まるのに伴い、空間計画の検討およびそれに関わるまちづくりのアドバイザーとして、引き続き各地区別にコーディネーターをおく体制がとられました。この体制のもと、中井（全体計画、町方地区）、尾崎（安渡地区、小枕・伸松地区担当）、福島（町方地区、沢山・源水・大ケ口地区担当）らが各地区の復興に向けた様々な場面において、役場内の担当部署・関連部署や住民との会議における各種調整、提案、コーディネートを行っています。この体制は住民主体の空間デザイン検討組織である「大槌デザイン会議」（2013年3月-2014年3月）や、地域共同体の復興に向けた戦略検討組織である「地域復興協議会」（2014年4月-）にも引き継がれています。
また学生ら研究室メンバーによる、ワークショップの運営補助や大槌の特徴である湧水の生活史調査など、研究室として空間デザイン検討を含めた復興まちづくり支援に取り組んでいます。
震災によって町長が被災し、町長不在であった大槌町長選挙が2011年9月に行われました。当選した碇川町長は、住民の議論を基に復興基本計画を成立させるボトムアップ型の策定プロセスを示し、それに向け町内10地区の地域復興協議会が立ち上げられました。短い期間での住民との対話と復興基本計画のとりまとめに向け、当研究室の中井（町方地区担当）、尾崎（安渡地区、小枕・伸松地区担当）ら学識経験者が各地区のコーディネーターを委嘱され、専門的・中立的立場から住民との議論をコーディネートし、各地区の復興基本計画策定に向けた支援を行いました。
2011年3月の東日本大震災をうけ、同年5月に研究室メンバーを含む東京大学の教員・学生有志で大槌復興支援チームが組織され、研究室と大槌町のつながりが始まりました。復興に向けた住民との恊働の手始めとして、市街地が壊滅した大槌において、被災者が集まれる「屋台のある広場」を住民と共に計画・デザイン・製作し、同年7月、小鎚神社の前に「ヤタイ広場」としてオープンしました。
（協働：南雲勝志（ナグモデザイン事務所）、ゆいっこ大槌、居酒屋みかドン、有限会社上田製材所）
完成したヤタイ広場の風景（2011.7）
・中井祐
大槌町の復興における各地区空間計画-大槌デザイン会議の試み-
景観デザイン研究講演集No.10 2014 pp290-292
・ 福島秀哉／中井祐
岩手県上閉伊郡大槌町町方地区における復興まちづくりについて
景観デザイン研究講演集No.10 2014 pp293-296
・福島秀哉／浅井淳平
湧水と生活史に関する記述 －岩手県上閉伊郡大槌町町方を対象として－
景観・デザイン研究講演集 No.9 2013 pp.1-4
・中井祐
岩手県上閉伊郡大槌町の復興計画について
景観・デザイン研究講演集 No.8 2012 pp.249-252
・尾崎信／中井祐／南雲勝志
岩手県大槌町における被災者のための屋台と場のデザイン
景観・デザイン研究講演集 No.7 2011 pp.244-245
・中井祐
「大槌町における住民主体の復興まちづくり」
新都市 Vol.67、pp.67-69、2013.11
・中井祐
「土木の使命と、想像力について」
土木施工2013年1月号 2013.1
・中井祐
「身近なパブリックを支える社会基盤の構築を」
土木学会論説 2012年8月版
「教授インタビュー・１ 中井祐教授 工学系研究科」
THINK FOR JAPAN 活動報告冊子 pp.14-25、2012.3.11
